新年早々、掃除当番事件。目的を見失わないためには

みなさま

ご挨拶が遅れましたが、明けましておめでとうございます。

年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。

 

フェイスブックでもお伝えしていますように、

日本では4日からそごう千葉店での販売が始まり

ケニアも3日から生産現場が動いています。

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(初日の出!ではないですが、新年を祝ってケニア・マチャコスの『アンバーアワー』をお届けします)

 

1月3日。早速、「ピコーン」というケニアからのチャット音。

お、新年のあいさつかしら?と思ったら

「ひかる!この会社では、休日の分の仕事も

結局やらないといけないんですか?!」

とスタッフAから謎のチャットが・・・

 

よく意味が分からないので、他のスタッフにも事情を聞くと

実は簡単なお話。

 

ケニアの工房では毎日、当番制で帰りの掃除をするのですが

スタッフAは有休を取ったため違う人に掃除をお願いしたそう。

ところが、その代理スタッフも急遽休まなければいけなくなり

掃除がされないまま年を越し、

朝到着したスタッフAが他の全員に

「この間しなかった掃除をして」と言われて

怒った、という流れでした。

 

そもそも・・・

いくら生産担当といえど、さすがに掃除当番まで管理しきれません。

しかも、これはチームワークが試される案件。

「これはみんなで話し合って解決して」と突き放しつつ

どうしても、一言加えてしまいました。

 

「そもそも、掃除当番の本来の目的は

みんながきれいな職場で働けるためです。

話し合いの間、それを忘れずにね」

 

偉そうなことを書いたものの、「本来の目的」というのは

一番忘れやすいことだと思います。

 

販売を担当していたころは、自分がやりたいことを優先して

売り上げを立てる!という根本のところが

見えていなかった時がありました。

 

生産現場でも、関わっているスタッフとあまり仲良くなると

彼らの職場環境の改善などにばかり気を遣って

その他関わっている多くの関係者のことが

頭の中で後回しになってしまっていることがあります。

 

視野を広く。目線を高く。

そして、目標を見据える。

 

今年に限らず、常に意識していなければいけないことと

認識しつつ、

2017年も目的に忠実に、前に進んでいきたいと

改めて心に決めました。

 

2017年が皆さまにとって幸多き一年になりますように。

そして、まだまだ未熟な会社でありますが、

本年もどうぞ、アンバーアワーをよろしくお願い致します。

 

アンバーアワー 副代表

岡本 ひかる

2016年は「新芽」の年 ~今年一年を振り返って~

気付けばいつの間にか大晦日

皆さま、お正月の準備はいかがでしょうか。

 

私は先週、こっそりケニアから帰国し、

日本の寒さにぶーぶー文句を言いながらも

2017年に向けて事務所をせっせと掃除しながら

この一年を振り返っています。

 

この一年を漢字一文字で表すと?

テーマは?キーワードは?など色々考えてみたのですが

やはりサイザル専門店としては植物で例えるのが適当らしく

辿り着いた答えは「新芽」でした。

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2013年に種を植えてから3年。

土を耕して、様々な肥料を試し、

なぜ芽が出てこないのだと焦ったり

緑が見えた気がする!と喜んだりして

今年一年でやっと、ベイビーサイザルが顔を出したような

気分でいます。

 

まず、ケニアの生産部では

雇用者ネットワークが300人近くに上り

日本人スタッフが常に駐在していなくても

ケニア人スタッフだけで工房がある程度

回るようになりました。

 

織り部門ではトレーニングの成果もあって

基本デザインが2種類から30種類に広がり

染色も随分と安定するようになりました。

 

来年から、商品やデザインの幅を広げる

基盤ができていたとスタッフ一同、

自信を持って言えます!

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また、こちらのブログではあまりお話していませんが

日本の販売部も劇的な変化を見せています。

 

4月に素敵なご縁があって

アンバーアワー初めての社員が加わり

志高いインターン生も何人も集まって

販売チームができました。

 

2016年の始めは、私不在でお店を持つなど

考えることもできませんでしたが、

今や私がケニアに行って数か月留守にしても

お店が回っているどころか

私が担当していた頃の何倍も

おしゃれで楽しく、華やかなお店ができています。

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私と同じくらい(いや、もしかしたら私以上?!)

アンバーアワーが好きで、商品を大好きと行ってくれるスタッフに出会えて

わたしもブランドもパワーをもらい、

ますます将来の楽しみが増えました。

 

また、今までも、たくさんの方に支えられてきた会社ですが

今年は「顔見知り」のお客様が増えたことが

私としては何よりも嬉しいことでした。

 

出店場所に必ず来てくださるお客様。

応援に、と差入れを持ってきてくださるお客様。

お部屋中にサイザル製品を飾り、

写真を見せてくださるお客様。

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(私の体調を心配して、美味しいお茶をたくさん頂きました。T様、いつもありがとうございます!!)

 

長続きする会社は、愛される会社。

皆さまの期待に応え、

もっと好きになっていただけるように

これからも頑張ります。

 

先日、4回目の出店となるアトレ目黒店が終了致しました。

私も撤収作業に参加したのですが、

参加した理由は、撤収以外にもある「儀式」を行うためです。

 

撤収作業が終わり、什器も何もない景色に戻った後

お世話になった売り場をゆっくりと歩いて回り

最後に売り場に向かってお辞儀をし、

「短い間でしたがお世話になりました。

また、ここに戻ってこられるように

精進いたします」と感謝の言葉を述べます。

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そして、実は・・・

撤収の次の日には新たな売り場で搬入作業が!

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この広い広い店舗がどこにあるのかは・・・

お知らせを楽しみにしていてください。

 

売れる場所があるということは

本当にしあわせなことです。

これから、会社がどんなに成長を遂げても

浮かれることなく、感謝の気持ちを忘れずに

前に進み続けたいと思っています。

 

2016年も大変お世話になりました。

 

2017年がみなさまにとって充実した一年となりますことを心より願っております。

 

アンバーアワー 副代表

岡本ひかる

クリスマスは甘くない!まさかの砂糖事件発生

1980年代のこと。

エチオピアで起こっていた飢餓への支援のため

有名歌手やスターが集まりある歌をリリースしました。

その名も「Do they know it's Christmas」

(訳:彼らはクリスマスだということを

知っているのだろうか)

 

歌の内容としては、雪も降らず、

生きていくだけで精一杯なアフリカでは

クリスマスを知っているのだろうか、

というもの。

 

この80年代のバンドに是非伝えてあげたい・・・

アフリカ全土とは言えないけれど、

少なくともケニアにはクリスマスが来ます!

キリスト教徒の多い我がマチャコスの町では

クリスマスは一大イベントなのです。

 

さて、ケニアで本格的に生産が始まってから

3回目のクリスマス。

協力者の女性たちとの付き合いも長くなってきた中で

グループを訪問する度に「クリスマス」という言葉が

ささやかれるようになりました。

 

今まで、工房スタッフには細やかなプレゼントはあげていたのですが

確かに、農村部の方々にも今年こそ何か渡しても良いかもしれない、と考え

早速スタッフに調査したところ、クリスマスと言えばやはり食べ物をあげるのが一番良いとのこと。

食べ物、と言えば:

・小麦粉(主食のトウモロコシ粉ではダメ)

・砂糖

食用油

など。

 

しかも、それぞれにプレゼントとして喜ばれる最低分量があるらしく、

小麦粉だったら1キロ、砂糖なら最低500グラム、油は1リットル、といった具合です。

 

事前に集計したところ、現時点での協力者数はなんと300人近く!

それだけ大勢の人に一人ひとりプレゼントするとなると、

零細企業としてはどうしても頭を抱えてしまいます。

 

そこで、スタッフにこんな質問を・・・

例えば、小麦粉の大きな袋を買って、みんなに分けてもらうのはどう?

→ダメ。「あの人の方が多く取った」と言って喧嘩になるから。

経費削減のため、すこ~しだけ量を減らすのは?

→ダメ、絶対にバレる。グラムを知らない人でも、袋の膨らみや重さで疑いを持つ。

代わりにステキなお皿をプレゼントするのは?(お皿の方が安いので)

→普段はいいけど、クリスマスは食料品と決まっている。

 

うぅぅ、難しい・・・

 

市場やスーパーを周り、計算機片手に色々と考慮した結果、

何とか砂糖500グラムに落ち着き、

早速スタッフが大量の砂糖を買ってきて配布の準備に掛かりました。

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まさか、この砂糖が、あとで様々なトラブルを引き起こすとは・・・

 

まずは、サプライズのはずのお砂糖に事前に気付いてしまったグループでは

訪問時に突然人数が30人から40人に増えました。

大きなグループの場合は、「バスケット作り部隊」「糸作り部隊」など

メンバーを仕事によって分けているため

グループのメンバー全員が私たちと関わっているわけではありません。

 

「いつも協力してくれている人たちへのお礼だから・・・」

ということで、見知らぬ10人には帰っていただかなくてはいけませんでした。

 

そして、最も大変だったのは工房スタッフとのやり取りでした。

 

実は、今回工房スタッフについては事前に考えてあったレインコートを

プレゼントとして準備していました。

 

毎年恒例になりつつあるクリスマスパーティーを開いて、

お菓子やジュースを飲んで、椅子取りゲームやお絵かきゲームで盛り上がり

最後にレインコートをプレゼント。

 

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(去年も行った絵描きゲーム。みんなの絵が独特で必ず盛り上がります)

 

皆すぐに着てくれて大喜びしてくれたので、

私もすっかりいい気になっていました。

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ところが・・・その数日後。

「私たちの分のお砂糖は?当然もらえるわよね?」との声が。

 

予算の都合上、今年はレインコートだけと説明すると大激怒。

「レインコートは特別ギフトであって、

メインギフトは食料品でしょう?

なんで皆はもらえて私たちはもらえないの?」

 

とは言っても、レインコートは砂糖の何倍もの値段。

村の人達とこれ以上を差を広げるわけにもいきません。

 

説明した結果、来年は必ず食料品をメインに、

という結論にいたったのですが

この騒動で私の中で3つの気付きがありました。

 

1.欲しい物よりあげたい物を優先してしまった

私の今回の大きな失敗は、彼らが欲しい物を聞くのではなく

私があげたい物、を選んでしまったことだと思っています。

レインコートは確かに喜んでくれましたが

地元の習慣としてはクリスマスはやはり食料品をもらうのが嬉しいのです。

それを無視して行動してしまったのは私の間違えで

反省しなければいけません。

 

2.特別扱いはやはり不公平

私は工房スタッフを特別扱いしてしまった結果

スタッフは返って、全員と同じでないことに不満を感じました。

例えば、全員にお砂糖が配られて、

スタッフだけ何かプラスで付いていれば

恐らく問題はなかったのです。

村の女性たちにとっても、工房スタッフにとっても

過度な特別扱いはただただ不公平です。

 

3.人間関係はどうしても甘えが出る

工房スタッフとも深く関わって3年近く。

どんな人間関係もそうですが、

時間と共に慣れや甘えが生じます。

私は工房スタッフのことを知っているつもりになっていましたし、

スタッフも「これくらいしてくれて当たり前」という態度が

随所にみられるようになりました。

お互いが謙虚でい続けるってなんと難しいこと!

 

でも。でも。

3年で生まれた甘えもありますが、

3年で生まれた絆も、あります。

 

そして、こんな件では揺るがないくらい

私はみんなが好き。

 

いつかこの件も、笑い話になる日が来るだろう。

それまでにも色々な葛藤があるだろうけど

また来年の12月もケニアでみんなと

クリスマスパーティーができますように、

と想像しながらニヤニヤしてしまう

甘々な生産部長です。

 

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フェアトレードの「フェア」は何を意味するのか・・・ 悲運のグループ訪問での気付き

「アンバーアワーはフェアトレードの会社ですか?」

お店に立つときによく聞かれるこの質問。

発展途上国の商品を扱っている以上、こう聞いていただくのは当然のことです。

 

私はいつも「はい、フェアトレードの一環です」と答えています。

ケニアの生産に関わる取引では常に現場の相場を調査したうえで

適正価格を求めていますので、この言葉に嘘はありません。

 

ただし、現場にいればいるほど、「適正」という言葉の意味を考えれば考えるほど、

正直に申し上げて「適正」を定めることの難しさも感じています。

 

価格は、日本での販売価格を基にした利率で計算するべきなのか。

現地の相場を踏まえて、相場通りに払えば、それは適正なのか。

現場の人たちの言い値はどこまで参考になるのか。

何が「フェア」を作るのか。

 

フェアトレードについて考える中で、

今回訪問した協力グループの中でも特に残っている場所があります。

 

工房からバスで1時間半、更にバイクで20分ほど乗ったところに

バスケット作りをしている女性グループがいます。

以前、別ブログでも紹介したことがありますが、

ちょっと辛い過去を持ったグループです。

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(女性グループの立派な倉庫には自慢のバスケットの絵が書いてあります)

 

以前はとても大きく元気だったこのグループは

ある日ヨーロッパのフェアトレード団体から

1000個ほどの大量のバスケットの注文を受けました。

 

その団体の男性は、グループのために

染色用のドラム缶やバスケットに縫い付けるラベルを用意し

少額の保証金を支払った後

納品日を設定して去っていきました。

 

時は2007年。ケニアでは大統領選挙が行われました。

選挙の結果に納得しなかった反対勢力が暴動を起こし、

2ヶ月ほどの紛争が勃発。「ケニア危機」と呼ばれる時代です。

 

ケニア危機の影響でケニアに来ることが叶わなくなったのか。

他の理由で経営が厳しくなったのか。

詳しい理由は未だに分かりませんが、注文は一方的にキャンセルされ

女性たちの基には売り先のない大量の在庫の山だけが残りました。

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この話は、随分前から同僚に聞かされていたのですが、

私自身は今回初めて、このグループを訪問しました。

 

2007年には元気だった女性たちもそれなりの年齢になってきています。

ゆっくりとした足取りで、少しずつミーティング場所に集まってくる間

コーディネーター役のペニーナさんという女性がせっせと倉庫を掃除し

私のための椅子を用意してくれます。

 

掃除してくれた倉庫の中に入ると、

そこには壁一面に並ぶ噂通りのバスケットの山。

10年の月日で埃が溜まり、湿気でカビが生えてしまっているものもあります。

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バスケットに丁寧に縫い付けられた

フェアトレード」と書かれたラベルを見ながら

悲しみと怒りが心の中で混ざりました。

 

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その時点では、単純にこれだけの注文をしておきながら戻ってこなかったその団体が

許せず、女性たちの落胆を想像して悲しくなったのだと思っていましたが、

後日、何度もそのシーンを思い返す内に別の考えが芽生えました。

 

フェアトレードの仕事をすることが容易でないことは、私が身をもって知っています。

注文をキャンセルしたこと自体は、事情を知らない限り私には責められません。

便りにしていた取引先が急に倒産したのかもしれない。

それに、政治や治安の悪化は確かに、深刻です。

もしケニアで事件が起きて政府に渡航禁止令を出されてしまったら

私自身、ケニアに来ることが難しくなりますし、

自分や他の担当者の身の安全についても考え、判断しなければいけなくなります。

 

私がこの団体に対し「許せない」と思ってしまったのは

注文をキャンセルしたことよりも何よりも

彼女たちをもう一度訪問しなかったことなのだ、と気付きました。

 

ケニア危機の間は確かに難しかったかもしれない。

飛行機代だって、もちろん安くはない。

来たところで、罵倒されることは分かっている。

 

それでも、例え罵られることは分かっていても

ちゃんと来て謝るべきだった、と私の心は訴えます。

状況を改善できなくても、彼女たちが外国人に対して全く信頼を失ってしまう前に

もう一度、最後に彼女たちの声に耳を傾けるべきだった、

それこそがフェアトレードではないか、と。

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(最近、新たな注文も増えて活気づいてきたグループ。ベテラン勢が若いメンバーを教えます)

 

フェアトレードの定義の中でこのような文章があります:

フェアトレードは、対話、透明性、敬意を基盤とし、より公平な条件下で国際貿易を行うことを目指す貿易パートナーシップである」(参照:フェアトレードの定義 : フェアトレード・ラベル・ジャパン / Fairtrade Label Japan

 

私は、適正価格について、「正解」を出せているかどうか分かりません。

自分たちの事業の状況を見ながら、交渉や話し合いを繰り返している状態です。

でも、価格の向こう側にある「対話」を大事にすることが

私にとって、フェアトレードの根幹にある部分だと、

今回のバスケットグループ訪問が気付かせてくれました。

 

2ヶ月のケニア訪問は終わり、私は一度日本に戻ります。

次に来るとき、きっとまた女性たちから色々な意見が上がるでしょう。

私が苦手な値段交渉も恐らく発生します。

 

そのときは、笑顔でいよう。

ちゃんとすべての話を聞き、私たちができることを全力で考え、

そのうえで正直に、対等なパートナーとして答えよう。

 

それが、私が今すべき、最高の「フェア」であるから。

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(グループとの記念写真。何だか楽しくなってしまって思わずみんな笑顔に)

「誰かのために」は諸刃の剣? ケニアで仕事をするうえで気を付けていること

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(織り糸グループ訪問時。とっても協力的で楽しい女性たちでした!)

 

アンバーアワーは、ケニア農村部の女性たちの雇用創出を目的とした会社です。

私は創設者の一人として会社の目的と理念を常に意識しながら仕事をしていますし、

何を判断するにも、必ずこの原点に戻ります。

 

しかし同時に、設立当初から心に決めていることが一つあります。

それは、決して「ケニアの人を助けるために仕事をしている」と思わないことです。

 

残念ながら人の心は弱い。

誰かのために「やってあげている」と考えだすと

その思考回路が根強く残ってしまい、

問題が生じてしまったときに

「こんなにしてあげてるのに」という気分になってしまう。

 

私は、ケニアより平均所得の高い国から来た外国人であり、

更にここに来れば「賃金を払う側」です。

 

つまり、傲慢な気持ちが生まれやすい環境に自らを置いているため

尚更自分を律しないといけません。

 

こんな真面目な話を唐突にし始めたのには

ちょっとしたきっかけがあります。

 

ケニアに来る際はなるべく織り糸を作ってくれている農村部の女性グループに

挨拶に回っています。

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(別の織り糸グループ。高齢の方が多いのですが、意欲的です)

 

先日、今まで訪問していたグループが

ひとつリストから抜けていることに気付きました。

 

早速担当者のガブリエルに聞いてみると、

「あそこはもう少し態度を改めないと難しいと思う」との答え。

 

どういう意味?と聞いたら

どうやら訪問時に品質などについて揉めていたときに、女性たちに

「私たちはムズング(外国人)のために作ってあげているんだ!

私たちが作らなかったら、あなた達が困るんだ!

だから条件を全部飲め!」と言ってきたのだそう。

 

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(担当のガブリエルが糸の品質等を査定し話し合っているところ)

 

ほほぅ、そう来たかと思いつつ、

ガブリエルに、「それで、あなたはどう答えたの?」と聞いたら

彼の答えがこちら:

 

「僕たちの関係は対等だ。あなた達が良い質のものを作って

僕たちがそれを良い値段で買う。量が多ければ、お金も増える。

これはビジネスだから、お互いの利益を探さないといけない。」

「それに、誰かのためにしてあげる仕事なんてない。

仕事は、自分の幸せをつかむためにするものだ。」

 

この答えを聞いて私はちょっと安心しました。

というのも、以前似たようなケースがあったときに別の担当者が

「むしろ、僕たちがそっちのために働いているんだ!」

と返してしまったことがあり、

恩着せがましいと非難を浴びたことがあったからです。

 

誰かのために頑張る。

誰かを思うことが仕事へのモチベーションにつながるのは素敵なこと。

だけど、誰かのために頑張ってあげている、という思いは

積もり積もれば恩着せがましくなります。

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(糸を持って踊ってくれている村の女性たち。

一番左の女性がグループの創設者。彼女がグループを作ったのは

村の女性たちの未来のため。ここでの「誰かのために」はとてもポジティブです)

 

ケニアの人達を助けてあげている

という感情は私にとってご法度ですが、

それでもスタッフや関係者への思いは人一倍強く、

彼らの幸せを願う気持ちが私の原動力となっていることも事実です。

 

最後に、夏に訪問した際に撮ったお気に入りの写真をお見せします。

工房で、3人娘(私より年齢は上ですが・・・)が織っている後ろ姿です。

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工房の椅子に座ってこの後ろ姿を見ていると、

彼女たちの可能性や選択肢が広がる機会を増やすためにも

自分ができることは全力でやらなければ、と思うのです。