ケニア横断、お隣ウガンダいざゆかん!~中編
国境を越えてウガンダに入った私は、疲れた体をビールで癒やし、爽快な朝を迎えました。
ナイロビを歩けるならアフリカのどこに行っても大丈夫という友人の言葉を信じ、ウガンダ2日目は、バイクタクシーで首都カンパラの中心街へ。
道端に止まっていた、サングラスが妙にかっこいいそのバイタクのお兄ちゃんに引かれ、中心街までの値段を聞くと、4,000ウガンダシリングだ、と。
4,000…?
願いましては、約120円也。
ウガンダシリングは貨幣単位が大きく、50,000ウガンダシリング札というマネーに、計算が苦手な私の頭の中はハラホロヒレハレ。数字が駆け巡り、交渉も買い物も一苦労。
兄ちゃん、4,000という響きが高い。3,500でどう?
兄ちゃん快諾。
へへ、ケニア生活で交渉はうまくなったのだ!
あ、でも500ウガンダシリング値切るって、たかだか15円。そりゃ快諾だ…。
値切るなら、1000を超えよう、ウガンダシリング(字余り)。
さて、初めてのカンパラでまだ右も左も分からない私は、とりあえずモールと周辺を歩くことにしました。小腹も空いたしランチタイムと思い、楽しみにしていたウガンダ食を探し歩いてみるものの、おしゃれモール周辺にはザ・定食屋!的なお店がありません。
ケニア工房の70円のランチにすっかり慣れてしまった私には、モールで1000円を超す食事などとてもじゃないけど手が出ない。しゃあねえ、小腹は満たないけど、軽く済ますか。
ところが、ふらりと入ったそのカフェは日本に負けないステキさ。
その雰囲気にテンションが上がり、メニューを開くと、ワーオ、値段はテンション以上に上がる…。
キャッサバ(タピオカの原料でお芋)のフライが215円。
うっそ。
たかだかキャッサバでしょ!? ごろごろ収穫できるでしょ!?
それにこの量はおやつでしょ!?
ああ、私のランチ3日分が…。
もはや金銭感覚がおかしくなっている私は、その高級キャッサバで小腹を満たし、ディナーは友人がごちそうしてくれた高級インド料理で大腹を満たし、〆におしゃれバーの高級モヒートで金持ち気分を満たしたところで、カンパラ2日目を終えたのでした。
すでにランチ何週間分かの出費がかさみ、すっかりお金は減り、食べ過ぎで体重だけは増えた頃、宿泊させてもらった家の周りをふらふらと歩いていました。
カンパラは「7つの丘」と称されるように、道は緩急が激しく、乾燥した地面は気を付けないとスルスルと足をとられそうになります。ケニアよりも標高が低く、小乾期で暑さが増していたカンパラの丘の斜面には、赤茶色の屋根の高級住宅街が見え、反対側の坂の先にはトタン屋根のバラックが軒を連ねていました。
その途中、小さなお店の横で、細い竹のようなものをナイフで割いて何かを作っている人たちがいました。
「何を作っているの?」
「串だよ。ここにお肉を刺して焼くんだよ。」
何ですって? 串焼き? こんなにステキな響きはない。
「ほれ、やってみな」
おじさんにナイフを渡され、私は見よう見まねでその細い植物の先を削りながら、若いお兄ちゃんたちの指導のもと、串焼き用の串を作るお手伝いをすることになりました。
おー、ケニアから来たのか。
それならスワヒリ語は分かるのかい? キドゴ(少し)か。
おー、故郷は日本か。
この辺りのスラムにも仕事を作ってくれ。
おー、ナイフの使い方が大分うまくなったな。
さあ次はヤギの肉に味付けをするぞ。
お兄ちゃんたちは、私にいろいろと質問しながら、手際よくヤギに味付けをし、できたばかりの串に刺していきました。
「あ、これは君が作った串だな? 先がとがってないぞー、はっはっはー。」
日も落ちかける夜7時。
私は木の椅子に腰かけ、彼らの仕事を手伝いながら深い思いを抱いていました。
ケニアではすっかり工房のマネージャーというポジションになってしまい、肩書きをはずしたシンプルな人と人とのやりとりが希薄になっている。きゅっと胸が痛くなりました。
ただの通りすがりの日本人を仲間に入れてくれ、一緒に作業をしながら他愛ない会話をする。何だかとても人間らしくて、おしゃれなモールなんかよりも、ずっと自分の心が満たされていくのを感じました。
「あとは炭を準備するだけだ、8時から焼くからね。」
「いくらで買えるの?」
ポケットには5,000シリングという大金そうな150円。
するとおじさんは言いました。
「買うつもりなのかい? 今日はお祝いだよ。タダさ! 後で戻っておいで。」
アッラー!
ウガンダの税関で現れた神に続き、ここでも神が!!
アッラー!
私、とんかつも食べるし、断食してないし、1日5回お祈りもしないけど、今日はアッサラーマレイクム!
お言葉に甘えて、ごちそうになる!!
ビンボーマリナの救世主。タダ飯にありつけるなんて!
ああ、これが本当の「ビンボー神」!
8時過ぎ、夜に出歩けるカンパラの住宅街に、もくもくと煙を出して焼かれるヤギの串焼き。お手伝いしたお駄賃。ちょうどいい具合に出来上がっていました。
新橋のガード下ならぬ、カンパラの坂の下で食べる串焼きは、慣れないナイフを片手に手伝った分、喜びもひとしお。ほんのりスパイスの効いたその味は、高級キャッサバよりずっと思い出深いごちそうとなりました。
次回、ウガンダの旅後編。
ここでも神は現れるのか!?
(生産担当:マリナ)