はじめてのおつかい~染料求めてプチアドベンチャー
日本では、子どもがひとりでおつかいする様子を追ったテレビ番組が人気ですね。ドキドキしながら初めてのことに挑戦する姿が初々しくてかわいい。
私、アラフォーの域に突入しましたけど、先日ナイロビもちょっと離れたところにて、はじめてのおつかい。その姿が、かわいい~わけもなく、ちょっとしたアドベンチャーになりました。
3か月前のこと。
サイザルバッグに使用している染料が不足し、ナイロビへと買い出しに。
その会社は産業エリアにあり、中心街から少しはずれた行きにくい場所で、また安全と言える雰囲気でもありません。
それでも行かねばならぬわけで、私はケニアのアニキ、デダンに行き方を聞くことにしました。
(使用している染料。容器もどんどん虹色になってくる)
「産業エリア行くの? バスで? 僕が連れていってあげられたらよかったんだけど、仕事が入ってるんだよね。カランジャに頼んであげる。」
カランジャ。
アニキの弟分。つまり、私の弟分(←ジャイアンか)。
カランジャは、アニキ同様サファリガイドを職としており、日本を話す若き青年。
「日本人はね、たまごみたいなの。落としたら割れちゃう、とても繊細なフィーリングを持っていると思うから、他のどの国の人たちよりも、丁寧に向き合うのが大事なの。」
日本語だけでなく、日本人のココロまでつかみとっているカランジャ。
さすが多くの日本人観光客をもてなしてきただけある。
彼も初めて聞く名前の通りにある会社をめざし、運転するカランジャにマップ検索でナビをしながら、小さな川を越えて、スーパーの手前を右へ。渋滞で時間はかかったけど、無事に到着、目的の染料も手に入れることができました。
そして2週間前。
入荷を待っていた染料が入ったとのことで、再び産業エリアへ行くことになった私。
あいにくアニキも弟もサファリ中につき、今度こそはじめてのおつかいで、乗り合いバス(マタトゥ)で行くことになりました。
ちょっと心配だったので、前日カランジャに聞いてみると、
「一人で行くんだね。バスステーションから、スタヒトコミューターか、インディマンジェサッコっていうのがあるはずだから、それに乗れば着くはずだよ。何か困ったら電話してね。」
こういう情報、安心。
ナイロビは、アフリカ大陸でも「安全ではない」3つの都市のひとつだと言われたりします。
長くいれば危険アンテナも感度が上がるので、それに合わせた行動がとれるようになるのですが、外国人である以上は一定の注意を払っておくのが正解。
(ナイロビの中心街、迷ったら高層ビルが目印)
カランジャの助言通り、バスステーションには何とかサッコという目的のマタトゥがいくつも止まっていました。お客待ちのドライバーに聞くと、産業エリアには行かない、と。
「産業エリアはムトゥルワマーケットから、$%&#*$%&@・・・だ。あっちに#$%で、前には@p:@#%、・・・だ。」
・・・??
スワヒリ語が早すぎて、ムトゥルワマーケットしか分かんない。
聞き返しても、分かんない。
カランジャ―!!
これじゃ、ワカランジャー!!
「あれ~、産業エリアを走っているからてっきり着くかと思ったけど違ったみたいだね~。じゃあね、GMっていうところで降りて、そこから歩いて。君の場合はムトゥルワマーケットから行くよりその方が安全だから。」
私はバスステーションから離れ、GMに連れていってくれそうなマタトゥのお兄ちゃんに状況を話すと、あーそうかそうか、じゃああっちだ、と隣のマタトゥへと連れていってくれ、私は無事GMで降りることができました。
ここから染料の会社までは徒歩約20分。
アンバーアワーの工房があるマチャコスの産業エリアとは規模が違い、大きな工場が集まっています。すれ違う人たちは、多分工場勤務であろう労働者のみなさん。
こんなところに外国人の女性が一人で歩いていることが珍しいと、チャイニーズ!と叫ぶ人、ハーイベイビーと言ってくる人、ハグを求めてくる人…をうまくかわしながら歩いていくと、あ、あったあった、カランジャと一緒に来たときに目印にしたスーパー。やっと目的地まで到着しました。
多少の緊張がとれ、今度は帰り。
ナイロビ中心街に行くという通りがかりのバスに乗り、ちょっと安心。いつものバス乗り場に向かう道に入った…と思ったら、バスは左折。
どこ行くの、これ?
奥へと進むバスの道際には、中古の靴屋さんがざっと並び、ところどころでパイナップルを売ってるスタンド、ニセモノだらけの腕時計を売るおじさんが。
なんか、すごいとこ来たな。
市場みたいだな。
市場・・・
これか! これがムトゥルワマーケットか!
わざわざ遠回りをした方がいいと言われた、あのムトゥルワマーケット。
カランジャ、来てしまったよ…。
市場は終点でした。
降りたはいいものの、待機しているバスに囲まれて私の視界は遮られ、大きな屋根で全体が覆われた薄暗い道は、古着屋、バッグ屋、果物屋、何でも屋がひしめき合い、まさに迷路。
遠くに見えるナイロビのビル群を頼りに、私は結構ドキドキしながらスカーフでバッグを覆い、市場を抜けていきました。こっちか、こっちかと進んでいくと、一筋の光が。
あ、ここ。
それはいつもマチャコスからナイロビに行くバスが通る道。
ここまで来ればもう分かる。
ほっと一息、はじめてのおつかいを終え、カランジャにプチアドベンチャーをメールすると、
「マリナさーんは、もうケニアンだから大丈夫だよ」と、ちょっと伸ばすところを間違った日本語で返信が。かわいいよ、カランジャ、ありがとう。
(スリリングなおつかいの成果は、カラフルな製品に)
だけどね、あまり積極的には行きたくないのよね、行きにくいし、染料はなるべく無駄なく使っていこうね、マウロ。工房の染色担当のマウロに言うと、「来週分の染料が足りない」。
・・・。
早く言ってよ!!
私が染料買いに行くって知ってたじゃん・・・。
染料ショッピングは毎回スリルが伴うことを知り、マチャコスで平和ボケしている自分に喝を入れて、危機感知アンテナをスルスルと伸ばし、再びムトゥルワマーケットをめざすのでした。
(生産担当:マリナ)