「運び屋」のマステキ
マチャコス地域には、小さな中心街だけで3つも店舗を構える地元密着型スーパー、ピータームレイがあります。
このスーパー、ちょっと大き目の専属宅配三輪車(トゥクトゥク)があり、スーパーの仕事とは関係なくても、重たいものを運ぶときなど電話一本で飛んできてくれるありがたい存在。
その専属ドライバーがマステキ。またの名をアンバーアワーの「運び屋」と申す。
先日、電気のない工房で使っている発電機がうんともすんとも言わなくなり、修理が必要となりました。しかしこれが、なかなかに重たい。
(壊れた発電機。これがミシンを動かす唯一の原動力)
これは困った…。
そうだ!
運び屋マステキ、出番だぜ!
いつもの通り、電話をするとさっと駆けつけてくれました。
私と工房スタッフは発電機と共に荷台に座り、マステキの大きなヘルメットで視界をさえぎられながらも、修理屋さんに無事到着。
修理代は高くついたけれど、彼のおかげですばやい対応ができ、半日で復旧。
そんなある工房帰り、私はカゴの中から漂う買ったばかりのパイナップルの香りを嗅ぎながら、走り去るトラックが繰り出す土ぼこりにまみれ、夕暮れの日差しを浴びながら帰路についていました。
すると前からプップーとクラクションを鳴らされ、見るとマステキが手を振っています。
「家に帰るの?」
そう言ったが早いか、彼はさっとUターンし、「乗ってきな」と目で合図。
私は遠慮なく荷台に乗り込み、日差しをまぬがれてホッと一息つきました。
シンデレラのかぼちゃの馬車、とは言わないけれど、工房帰りの疲れた体にはありがたかった。
(運び屋マステキ。「愛車」でマチャコスの街を毎日何往復もしている)
「ありがとう、重かったから助かった!」
すると彼は、「いいんだよ、マチャコスの生活を楽しんでもらいたいんだ。君が幸せそうで、僕も幸せだよ。」
そんなことをサラッと言って、バイク用の大きな革の手袋越しに握手をすると、すきっ歯を見せて笑い、彼は颯爽と去っていきました。
アンバーアワーの「運び屋」マステキ。
地元の優しさに助けられながら、工房は今日もフル稼働しています。
(生産担当:マリナ)