ジャカランダの咲くころに
9月からアンバーアワーの仲間となったマリナです。
2007年に初めて訪れたケニア。
それ以来、心ココにあり…という思いを秘めながら過ごすこと7年。
私は日本での仕事を辞め、この土地で生活してみようと、身ひとつでやってきました。
途上国支援とか、人権擁護とか、立派な意思を持ってケニアへやってくる人たちの傍らで、目的も大義名分もなく、守ってくれる組織にも属していない、自称ニート。
それがまさか半年後、オーダーメイドのサイザル製品を手掛ける会社の生産担当者になるなんて…。
現場に入って1か月。
これから展開する製品やサンプルの輸送を間近に控えた忙しい時期。
工房ではスワヒリ語とこの土地に根付くカンバ族の言葉が飛び交い、ラジオからは90年代初頭の懐かしい「洋楽」が、時々音を狂わせながら流れています。
右隣りには、火花を飛ばしてメタル板を加工するオトコたち。
左隣りには、スッスとかんなを押しながら材木を削るオトコたち。
その間で、サイザルを草木の染料でクツクツと煮て、乾燥したらクルクルと巻き、それを経糸(たていと)と横糸にしてパッタンパッタンと織っていく――。
午後になるにつれて強烈に差し込む日差しがじりじりと肌を焼き、乾燥した風は、ときに工房に土ぼこりを連れ込みます。
そんな中で、試行錯誤して作ったブックカバー。
通常のサイザル繊維の撚り方では織り機に合わず、細くて丈夫な撚りを求めて駈けずり回ったり、織り方を変えてみたり、加工にひと手間加えてみたり…。
奮闘した末にたどり着いたブックカバーは、「鶴の恩返し」方式で織った高機織り(たかはたおり)。サイザルバッグの手触りとは異なり、柔らかく、毛羽が少ないため、使うほどにしなやかに手に馴染み、サイザルが日本の日常にあったかのような親近感と存在感。
ふー。何とか輸送に間に合った。
ドタバタの1か月。
工房からの帰り道、あちこちで咲き始めた薄紫色のジャカランダを見つめながら、私はほっと肩をなでおろしました。
―ジャカランダの咲くころに。
アンバーアワーの製品は、海を越えて日本に到着します。
(生産担当:マリナ)