美しいってどういう意味?品質の目利きについて





皆さま、こんばんは。マーケティング部のひかるです。

 

ここ数か月、日本の職人さんとお話しする機会が増えています。

商品の品質を上げるためにいろいろなヒントを教えていただくのですが、

長年の経験と修行で培われた技術、そして商品の目利きは本当に尊敬します。

 

 

一番よくお会いする職人さんがよく口にするのが「美しい」という言葉。

バッグのハンドル付けを相談していると、「こっちの方が美しいよね」

「ステッチは重ならないと美しくないから」といった感じで

自然とこの言葉を使われます。

 

「美しい」。

響きの強いこの言葉はあまり普段の生活で耳にしません。

かわいい、ステキ、おもしろい、かっこいい、は連発するものの、

デパートで一流品のバッグを見て「美しい」という言葉はすっと出てこない。

 

でも、この美しいという表現がものづくりではとても適切と感じています。

 

(職人さんに教えていただきながら共に作ったブックカバー
左側が私の作った隅。付属部分が浮いていて美しくない。
右側が職人さんの作った隅。隙間がなく、美しい)

 

そもそも、美しさの基準をどう捉えるのか。

英語では「Beauty is in the eye of the beholder」ということわざがあります。

訳すと「美は見る人の目にある」、つまり美の定義は人それぞれで客観的な定義はないという意味です。

 

実際、国や世代、そして個人によって美しいと思われる人も物も大きく変わります。

どんなに傑作と呼ばれる作品も、100年に一人の美人と呼ばれる女性も、

必ずその前で首をかしげる人がいます。

 

では、ものづくりの上での「美しい」は何を指すのか?

私の考えでは、ものづくりの美しさは好みだけではなく一つの作品としての完成度を意味しているのではないかと思います。

 

有名な話ですが、複数の研究により人は左右の対称性のとれた顔を美しいと感じるそうです。

私の勝手な想像ですが、人間は無意識にバランスのとれた顔を「完成度が高い」と思っているのかもしれません。

そこに様々な経験や知恵を経て、バランスが取れていなくても美しいと感じたり、意識的にアンバランスを選んだり、という「好み」が生まれるのではないかと。

 

商品の場合、品質に関わるところにあまり個人差は出ません。

例えば、縫い目はまっすぐの方が良い。

縫い目の感覚は均一が良い。

つなぎ目はあまり目立たない方が良い。

線をずらすときは、「計算されたずらし」が良い。

 

因みに、ケニアの協力工房のスタッフにも時々、「どちらの方が良い?」と二つの製品を見せると、同じものを選びます。

それは、「美しい」方。

 

ただ、どこが美しさを半減させているのか、細かい点は素人では気付きにくい。

美しさを追求するために何に気を付け、何に注意するか。

そうしたことも、職人の皆さまに教わっています。

(左はかご部分が歪んでハンドルがずれてしまっていた写真。右は歪み矯正後)

 

ときどき、正解が分からなくなって頭がグルグルしていると、

職人さんから一言 

「とりあえず、やってみよう」

そうだ、やってみないと正解も分からない!

実際行動に移すと、自然と答えが見えてくるのが不思議です。

 

そんな私の最近の口癖は「美しい」。

職人さんの真似をして使っている内に

「あ、この方が美しいですね」と自然に言えるようになったことが嬉しくて、

日常でもこっそり「美しい夕日」などと心の中で言ってみます。

 

皆さまも試してみてください。

ちょっと恥ずかしい、でも

ちょっと幸せな気分になりますよ

 

それでは、また来週。