オレ流、働き方のお国柄。





年が明け、日本では春物の洋服も出回り始める頃となりました。

ケニアの工房では、明るい色を使ったサイザルバッグの製作が進み、日本輸送に向けて在庫管理が始まったところです。

 

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私たちの会社アンバーアワーのロゴは、サイザルをイメージしたもの。

焼印のように革にプレスして、サイザルバッグに取り付ける作業を行います。

 

ロゴ作り担当は、草木染めも行うスタッフのマウロ。

 

確か前回使ったものが少し残っていたな。

そこでマウロには、必要な分だけ作るようお願いしました。

 

革の型どりはコテを使い、フルパワーで柄を回してくり貫きます。もう少し大きいコテなら負荷を軽減できるのですが、今はこれが限界。

マウロは上機嫌でコテを回し、机にはくり貫かれた四角形の革がいくつもできていました。

 

「いい調子ね。何個作ったの?」

「うーん、分かんない。」

 

「数えてないの…ね? あといくつ作るの?」

「うーん、分かんない。」

 

マウロ、数えてなくて、どんだけ作るの???

 

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どうやら彼の中では、これくらいかな~と思ったところで数える、という順番だったよう。そこでまずは在庫数を一緒に数え直し、必要数を出して、数えながら作るよう再度伝えました。すると「おー、なるほど、分かった」と、またコテをぐるぐると回し始めました。

 

大丈夫かな…。

私は若干の不安を覚えながら、彼が作業を進めるのを遠くから見守っていました。

 

翌日。

作業進捗を確認しようと、ロゴの材料を保管しているカゴを見ると、型どりが終わっているもの、すでにできているものが、あっちからこっちからわんさか出てくるではありませんか!

 

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マウロ、作業早いじゃん!

 

いや? 違う。

これ、前回の未使用分じゃない?

 

マウロー!! こんなに残っているのに何でまた新しく作っちゃうのよー!!

 

私は自身の仕事経験から、まずはあるものを確認して余分な作業は減らす、という思考回路で動いており、勝手にマウロもそうだと思い込んでいました。が、どうやら彼の場合は、後から確認というのがスタンダード。

 

作業をお願いすると、「おもむろに始める」というのがマウロのオレ流。

実はこれは他のスタッフにもあることで、準備確認をしないまま取りかかって、作業途中で、あれがない、これがないとなるケースが多々あります。

 

雇用機会が少なく、ましてや競争の激しい社会で働くことと縁遠かったスタッフと、日本の組織で何年と働いた私とは、動き方が違って当然です。

 

これは少し大胆な見方ですが、長い植民地時代、宗主国に従うことで生き延びてきた歴史、「自ら考えて切り拓く機会を奪われた」という状況は、ケニア独立から50年が経ってなお、人々のマインドセット、文化形成の大きな背景になっていると感じます。もちろん個人差はあるものの、キリスト教が色濃く根付いている様子からも、植民地化の影響はそう簡単に変わるものではない、そんな風に思います。

イギリス、やってくれたな?

 

働き方に違いはあれど、会社として存続するためには上手に物事を進めなくてはなりません。時の流れに身を任せすぎて溺れないよう、私たちの工房も「ポレポレ(ゆっくり)」から「テキパキ」へと変わっていくでしょう(多分…)。

 

(生産担当:マリナ)