サイザル織りが私の仕事
ケニアの工房には高機(たかはた)織り機が4台あり、現在4名の織り子さんが、毎日サイザル生地を織っています。これがアンバーアワーオリジナル、ブックカバーへと変身します。
昨年、初心者向けの卓上織り機トレーニングを経て、晴れて高機デビューをした2名の織り子さん。その複雑さに私の方がまいってしまいそうな中、彼女たちは毎日一生懸命学び、今や立派に織りあげるようになりました。
高機織りはセッティングに数時間かかるため、無駄を減らすためにも大きく・長く織るのが効率的かつ経済的。そのため、現在取り組んでいる織り生地サイズでは1日1枚が精一杯。まずはここをクリアすることが目標でした。
その織り子さんの一人、ウィンフレッド。
卓上織り機の時から、織りのラインが曲がりがちで苦戦している姿を何度も見てきました。当初は出来の悪さを素材や織り機のせいにもしていましたが、うまくなりたい気持ちが勝り、集中力もスピードも3人の織り子さんの中でトップ。
1日1枚。
目標をミーティングで確認すると、ウィンフレッドは「私はこの仕事が大好きなの。うまくなりたいし、がんばる」と宣言しました。
彼女の真剣さがうれしかったと同時に、私はここ最近のプチスランプ状態から抜け出しきれていなかったせいもあり、正直一抹の不安を覚えていました。
できるかな。質はどうかな。やっぱり心配だな…。
その日のランチタイム。
パキーン、カラーン、コローン。
派手な音が聞こえた先には、経糸(たていと)を支える棒が見事にまっぷたつに。ウィンフレッドの織り機でした。経糸の張りをきつくするため、両端から強い力で引っ張っており、耐えきれずに折れてしまいました。イヤな予感…。
(ものすごい音と共に折れた支えの棒)
私はすぐさま食べていた手を止め、直そうとすると、ウィンフレッドは新しい棒を持ってきて、「問題なし。マリナはまず食べなさい」と、一人できれいに取り換えました。
織り機のプロがいないため、問題が発生すると「壊れた」「調子が悪い」と訴えられることが多いのですが、何と言っても私は織りのド素人。勘を働かせて直すしかない中、ウィンフレッドは自ら考え手早く修正。着実に力をつけているんだなあと、私は尊敬と感心で見つめていました。
週末。
「1日1枚」の進捗を見ると、ウィンフレッドの名前の横には「6枚」と。
「ウィンフレッド、6枚織ったの?」
驚きと喜びの混じった私の声に、彼女はあごを少し上げ「そうよ」とドヤ顔。
すごい、すごい!すごいじゃない!
うまく時間を短縮させながら、目標をクリアしたウィンフレッド。
私の肩をポンとたたき、「お給料上げてね!」と冗談めいて言いながらも、誇らしげな彼女に思わず拍手。
素材、技術、やる気。
3拍子そろったときの織り生地は本当にきれい。常にここをめざしたい。
サイザルを高機織りで織るのは、アンバーアワーが世界初。
その仕事を誇りに思い、真摯に取り組むウィンフレッドの姿勢に、凹み続きだった私にも笑顔が戻ってきました。
(今日は真面目に書いたぞ @生産担当:マリナ)