たった一人の女性から。~織り糸グループ、再生の物語~





さて今回も織り生地の為のサイザル麻の織り糸を撚ってくれる

女性グループのお話です。

今回の主人公はこの女性、ジョセフィンさんです。
彼女は村の為、そして僕たちの為にたった一人で立ち上がってくれた女性です。

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彼女の住む村は工房のあるマチャコスから車で約1時間ほどの山あいの村です。
この村に訪れた時、ある光景が目に飛び込んできます。

それはサイザル麻が道に沿って何十メートルと生えている光景。

まさに”サイザル道”です。

その光景は圧巻で、これほど美しいサイザル道はケニアいちではないかと、

個人的には思っています。

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そんなサイザル道を持つ村、マクラニにもある女性グループが活動していました。
ジョセフィンさんもそのグループに所属していました。

僕と素材担当のケントンが初めてこの女性グループを訪ね

織り糸を回収しに行ったのは半年前のことです。

その時は彼女たちは僕たちの想像を超える量を作成していました。

メンバー全員もやる気も高そうで、僕らは彼女たちにとても期待をしていました。

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今月はどれくらい作ってくれているかな、っと楽しみに訪問した翌月、

その総量は激減していました。

何が起こったのかを確認すると、

みんな僕らが今日やってくることを知らなかったと言います。

家が近い数名の女性は、わざわざ取りに帰ってくれました。

女性グループと連絡を取る場合、通常はリーダーの人と連絡を取り合っています。
週1回あるミーティングで僕たちとのやり取りを伝えてもらっています。

来月くる日付を告げ、またリーダーにきちんとメンバーへの伝達をお願いし、

その場を離れました。しかし、その翌月さらに最悪の状況に陥ります。

誰一人として織り糸を持って来ていなかったのです。
こんなことはゼロとは言いませんが、滅多にあることではありません。

僕はケントンに、きちんと連絡を取り合っていたのか問い詰めました。
ただ、ケントンもこの状況をうまく捉え来れてないようでした。

この時、僕らにはある結論が浮かびました。
それはここの女性グループは、形式的な形でしかなく、

グループとして機能していないことがわかりました。

ケニアでは女性グループと形成すると、

政府から様々なサポートを受けることがあります。

そういった関係で実態のないグループが少なからず存在しています。

僕は怒り気味、ケントンは落ち込み気味で帰ろうとした時、

一人の女性が僕たちに声をかけてくれました。

その女性こそが、ジョセフィンさんでした。

今日は持って来ていないけれど、家には織り糸がある。

今度マチャコスにいく用事があるから、工房まで持っていきたいと。

そしてその数週間後、彼女は約束通り織り糸を工房まで届けてくれました。

僕たちは前回の織り糸ゼロ事件以来、

彼女たちのグループに行くことはありませんでした。

というのも、電話でリーダーに何度確認しても、答えがとても曖昧だったからです。

メンバーがきちんと作ってくれているのか、

はっきりしない限り僕たちも訪問することができません。

しかし、その間もジョセフィンさんは1ヶ月に2回の頻度で

工房に織り糸を届けてくれていました。


コツコツと一人で作り続けてくれた彼女は

2014年のグッドキリンガメイカーでベスト5に入りました。

彼女の作る織り糸は量も多く、品質もとても高い糸でした。

2015年に入り、ケントンのもとにジョセフィンさんから1件の電話が入りました。

周りの友人を集めて織り糸を作っている。

メンバーを集めておくから、回収に来て欲しいと。

僕たちは疑心暗鬼ながらも、数ヶ月ぶりにマクラニにやってきました。
するとそこには4名の女性の姿が。

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彼女は近所のやる気のある女性たちを集めて、

女性グループとは別の新たなグループを作ってくれていました。

そして彼女が先生役となり、女性たちに織り糸の作り方を教えてくれていました。

彼女はこれからもっと集めるから、と僕らには言ってくれました。
彼女曰く、グループの中には織り糸を作りたいメンバーもいたそうです。
大切な現金収入の機会であった僕らが来なくなったことで困っていたそうです。

そこで彼女はリーダーとなり、新たな織り糸作成サークルを旗揚げしてくれました。
そしてその翌月は8名の女性が集まり、織り糸を作成してくれました。

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一時期は買取を諦めたサイザル道を持つ、マクラニという村。

しかしたった一人の女性が、村を盛り上げ、活路を見出してくれました。

村の女性たちの為に、ジョセフィンさんは今日も仲間を集め、

織り糸を撚り続けてくれています。

 

(生産担当:横山)