私がケニアで織っているもの





正直に言おう。私はとれてしまったボタンを縫い付けることさえ下手である。

正直に言おう。私は編み物の棒さえ持ったことがないほど、手芸に縁遠い人間である。

もっと正直に言おう。私の人生で、「織る」という行為と毎日かかわるなど、到底思っても、ましてや願ってもいなかった人間である。

 

そんな私が、ケニアの工房でサイザル生地を織ってブックカバーを作っているんです。

 

いいんですか? 

 

いいんです!(←古い)

 

厳密に言えば、織りに詳しかったら、もっと早く、もっときれいに、もっと質の良い商品を作る工房運営ができただろうと、思うところがたくさんあります。

 

3週間ほど前、織り子さんたちは幅の広い織り生地を織っていました。ところがどうしてもOKを出せる質に仕上がらず、生地が織り上がるたびに、私の悩みは大きくなっていました。

 

下の写真をご覧いただくと一目瞭然。

左は幅20㎝、右は幅40㎝で織ったもの。

 

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右の写真は経糸(たていと)が重なり合い、織りの目が粗いのが分かります。

素材の太さに大差はなく、どちらも同じ手順で織ればできそうなものなのに、どの織り子さんが試してもほぼ結果は同じ。

 

とすると、素材のサイズや織り子さんの技術の問題ではないことが分かります。

では何なのか。このでこぼこの解決策にたどり着かず、ほとほと困っていました。

 

そんな課題を引っ提げての帰国。

同じく出来上がり状況を心配をしていた日本チームが、織り専門家の方との相談機会を設けてくれ、先日救いを求めて訪問してきました。

 

箕輪(みのわ)直子さん。

草木染めから織りまで幅広い経験をお持ちで、ステキな商品を作る「染織家」。

 

箕輪さんは明るい笑顔で迎えてくださり、早速課題をお話しすると、ふんふんと状況を理解され、「経糸を綜絖(そうこう)に通す順番を変えてみたら?」と。

 

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(日本チームと共に指導を受ける)

 

今までは綜絖と呼ばれる細い穴つきの紐に、経糸を2本まとめて通していたのですが、それを1本ずつに分けてみると、糸の重なりを予防できるとのこと。

織りの理論をすっ飛ばして現場に入った私にとって、これで課題が解決できるなんて、皆目見当もつきません。

 

経糸を均一のきつさに保つのも、織り機に糸を巻きつける際に紙一枚かませれば、大分改善すると。

 

紙一枚!? 紙だけで? 

 

それでいいんですか?

 

いいんです!(←また古い)

 

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(紙が巻かれた状態のロール部分。これで結果が変わるという)

 

さらに、ペダルと綜絖を簡単に結ぶ便利グッズを使いこなせば、調節もしやすく、経糸のバランスがとれるようになると教えていただき、こんな便利グッズで解決するなら、織り子さんも喜ぶし、何より品質が上がる可能性大。

 

スゴイ。。。

 

プロの経験、かゆいところに手が届く日本のアイディアグッズに驚かされると共に、勉強不足の自分にも反省。 

学ばねば、織らねばと思いながらも、毎日の忙しさにかまけて実行できず「織り織り詐欺」していた私。

 

でも、今回日本に帰国して思ったことは、何も私自身が織りのプロになるのではなく、日本とケニア双方に生きる技術と知恵と道具を融合し、人と人との関係性を付け加えて、有機的に「織り上げていく」ことなのだと改めて感じました。

 

私が織っているもの。

それがクリアになり、工房に新たな知識を持ち帰ることができるのが、今から楽しみです。

 

(生産担当:マリナ)