ケニアからの催促はチャットにて
*ピコーン*と鳴るスマホの機械音。
私の一日、といってもケニア工房の稼働している日本時間の午後2時から11時ですが、
この9時間の間、私はこの機械音に支配されます。
現在、ケニアのマチャコスにある工房では、
スタッフが懸命に生産をまわしてくれています。
日々の連絡はチャットにて。
主要メンバーに限って、週1回、その週の出来事や気付き、今後に向けたアイデア等を
記したレポートをスキャンし、メールで送ってもらっています。
意外に思われる方も多いかと思いますが、ケニアでもスマホ化が進んでいて
フェイスブックやチャットを使う若者が増えています。
携帯利用料は日本のように月額払いの場合もありますが、ほとんどの人はプリペイド式
なので、お金が入ったら携帯をチャージして使っています。
さて、9月に入ってから、新人スタッフのガブリエル君担当で
大きな輸送がありました。
私が遠方から出す指示を守りながら、商品をしっかりと袋や箱に詰め、
それを飛行場に持って行く大仕事。
ガブリエル君に7月に会ったときに、「とても重要な仕事なのよ!」
「あなたが間違えると、コストが増えちゃうのよ!」と口を酸っぱくして伝えたせいか
かなり力が入っていました。
それが先週日本に無事届き、ホッと胸をなでおろした矢先・・・
*ピコーン**ピコーン*
工房監督のジェーンからのチャット。
「荷物は無事届いた?次に向けて勉強したいから、ちゃんと悪いとこ教えてね」
(しっかり者のジェーンが週次報告書を記入中)
ジェーンも随分とスーパーバイザーっぽくなったな~と思いながら
「もちろん、ちゃんと伝えるけど、検品したいから少し時間ください」とお願い。
というのも・・・バッグ用のバスケットだけでも350個ほど。
パスケース数百個に織り生地、プラントハンガー、と
全て検品するのには果てしない時間が掛かるのです・・・
しかし!お客様にお出しする大切な商品に万が一のことがあってはいけないので。
在庫部屋の床に座りながらサイズや品質などを一つ一つチェックし、
問題点は細かくメモしていきます。
数時間かけて終わる検品。
次に待っているのはケニアに送るフィードバックメモ
(良かった点、反省点などをまとめた紙)
これがまた手間が掛かるので、他の仕事と並行して書いて
数日経ってしまったところ・・・
*ピコーン**ピコーン**ピコーン*
なになに?と思ってスマホを除くと
今度はガブリエル君からのチャット。
「ひかる、輸送の良い点や悪い点をまだ教えてくれてないじゃないか。
バスケットは曲がったり潰れたりしていなかったか?」
はぁ・・お願い、もうちょっと時間くださいな・・・と愚痴をこぼしながらも
実を言うと、内心とっても嬉しいんです。
ジェーンもガブリエルも、言葉は違えど伝えてきているメッセージは同じ:
"We want to improve (もっと上達したい)"
メーカーとしては、まだまだ足りないところだらけですが、
スタッフ一人ひとりが向上心を持ってくれている以上、
この工房には未来があります。
結局、4時間かけて出来上がったフィードバックメモは7ページに及ぶ大作に。
全体の総括、問題点の統計、そして写真付きの各商品に対する細かい反省点のリスト。
例えば、こんなことを指摘します:
・Aさんの織り生地は横がきれいに揃っているのにBさんのは歪んでいてこれでは加工しにくいので、BさんはAさんから一度トレーニングを受けてください。
・パスケースの左側と右側の縫い目の終わりが3ミリほど離れると恰好が悪いので、今後は同位置で統一してください。
・バスケットの糸がところどころ汚いです。ちゃんときれいな糸を使うよう作り手さんたちに指導し、チェックするときは明るいところで見るように
自分で認めますが、かなりネチネチと細かいです。
品質については特に容赦ありません。
さぁ、あれだけ催促したのにこんなページ数送られて凹んでるかしら・・・と心配していたら、またもやいつもの
*ピコーン**ピコーン*
ジェーンから:
「スタッフ全員でメールとフィードバックを読みました。以前より改善されていたと聞いてメンバー全員喜んでいたけれど、新たな改善点については対策を取っていくことを約束しています。」
良かった・・・
さて、次の輸送ではどんな違いが見られるでしょう。
ちょっと怖くて、ちょっと楽しみです。
後日。
基本的に仕事の話ばかりのジェーンとのチャットで突然
「最近、ひかるは元気?」とのメッセージが。
「元気よ、でも雨が多くてちょっとうんざり」
「こっちは太陽にうんざり!笑
じゃあ、ひかるがこっち来て、私が日本に行くわ」
「それもいいわね、私もケニアに行きたい~」
「あはは
でも、本当に早く戻ってきてほしい」
「うん、なるべく早く行けるようにがんばるね」
「うん、では良い一日を」
「良い一日を」
この日はちょっと優しく聞こえる機械音。
こんなほのぼのした会話ができるのも、
スマホでつながる醍醐味です。
※前回予告していた日本の革職人さんのお話は、また次回更新します!