ハゲコウ見守る首都ナイロビは誘惑と危険の街

ケニアの首都、ナイロビ。

イギリス統治下から首都として栄えたこの街は

ビルと人と車が混在している大都会。

 

インターネットでナイロビで検索すると

スリや犯罪など、とにかく悪い情報しか見つかりませんが

実際歩いてみると都会ならではの魅力もたくさんあります。

 

映画館に高級カフェ、ブティック、

アフタヌーンティーの出るホテル、

大手スーパー、ピザ屋さん、など。

普段の生活では縁のない物や場所があり

「上京」するときはちょっとウキウキ。

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アフタヌーンティーのセットは絶品でした!)

 

また、「アフリカの街ならでは」と言えば

木の上のアフリカハゲコウの群れ。

大都会の中で平然と飛び回る姿は圧巻です。

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とは言っても、私がナイロビに行くときは

大抵道具や備品などの買い付けのためで

そうした物品は華やかなエリアからは

少し離れた雑多な商店街や

泥まみれの市場の中などにあります。

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(ナイロビ中心街の道。大通りから一歩入るとこの様な雰囲気になります)

 

これはこれで、現場で仕事をしている者ならではの経験ができるので

個人的には好きな時間です。

しかも、同行してくれる同僚のガブリエルは大の歴史好きなので

市場の名前の由来や特徴を詳しく教えてくれるので

ナイロビのことを深く知れて、勉強にもなっています。

 

カウボーン(牛の骨)をあしらったアクセサリーを

手作りで作ってくれているお店に足を運んだり

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市場の研ぎ師さんにハサミを研いでもらったり

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5万とビーズが並ぶお店で商品開発に使えそうな物を選んだり。

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まさに現地で働くことの醍醐味!

 

さて、先月ナイロビに向かったときのこと。

たまたまバスで降りたところから目的地に向かうのに

中心部のいわゆる「永田町」エリアを通ることになりました。

 

議会や国際会議場の近くをとおり、

やっぱりナイロビのこちら側に来ると、きれいな街だな・・・

と思っていたところ、突然くしゃみに襲われました。

 

クシュン、クシュン、と止まらないくしゃみに

花粉症?と呑気なことを考えていたら

隣のガブリエルが

「ああ、ひかるも気付いた?催涙ガス

と一言。

 

はい・・・?

催涙ガス???

 

いや、経験したこともないから

これがそうかもわからない・・・

 

よ~く道路を見てみると

プラカードの残骸のようなものや

紙屑が脇に掃いてあり

白ピンク色の粉のような物が確かに

道にスプレーされた跡があり。

 

どうやら私たちは、デモが終わって間もない通りを

歩いていたようなのです。

 

普段、デモに近いような音がすればすぐにその場を離れるのですが

このときは、あまりに街が静かで、みんな普通にしているので

デモがあったことすら全く気付きませんでした。

実際、道を歩く人の中でも私が一番くしゃみしていたので

時間が経って残っていた催涙ガス

私が人一倍敏感だったのかもしれません。

 

それにしても、人生で初体験の催涙ガス

まさかケニアで、しかも自分が全く関わっていないデモの残骸で経験するとは・・・

 

せっかく、久しぶりにオシャレな場所に歩けたのに

すっかり気落ちしてしまい

足早に次の場所へと向かいました。

 

ふと見上げると、通りの向こうにハゲコウが2羽。

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ハゲコウ~、ちゃんと街を見守ってね

と話しかけてみたものの、

「そういう街なのさ」と言わんばかりに

ハゲコウは知らんぷり。

 

ちょっと怖い思いをしたナイロビ訪問。

それでも、その誘惑に負けて

また行ってしまうだろうな・・・

雨降りケニアから、雨やどりのすすめ

アフリカで私が密かに好きな時間。

それは、雨やどりです。

 

最近、ケニアでは雨季が始まり

朝から晩まで降ったり止んだり。

真っ青な空が見えているのに突然雲が現れてきて

土砂降りの雨に見舞われます。

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(ストロボを焚かなくても写る大粒の雨)

 

そんな時はとにかく、避難するのが一番!

一番近い屋根を見つけて、雨やどり。

知らない人たちと会釈しながらひたすら、

雨が過ぎていくのを待つのみです。

 

不思議なことに、私は日本で雨やどりをした記憶が

あまりありません・・・

常に天気予報をチェックしているからなのか、

それとも、嵐のとき以外は

折り畳み傘で何とかなってしまう雨だから?

 

ケニアの雨はとにかく雨脚が強い!

先日、山中の村からの帰り道、

バイクの後ろに乗っていたら運悪く降られましたが

大粒の雨が顔に当たってあまりに痛くて

1年分の「鬼は~外~♪」を味わった気分でした。

 

この時も、やっと見つけたお店の屋根を借りて

30分ほど雨やどり。

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(雨を眺めるバイクのお兄さん。何もない山道でお店が見つかって助かりました・・・)

 

私たちの工房でも、大雨が降り出すと

ちょっとした騒ぎになります。

 

まず、トタン屋根なので音がうるさくて

お互いに怒鳴らないと何も聞こえません!

パチンコ屋さんのような騒音の中

「雷が落ちる、電気を消して!」

「干していた糸を中に入れて!」

とそこら中から大声の指示が飛びます。

 

次に、雨漏りが始まります。

トタンの間を縫って漏れてくるので

その線上の物を急いで退けなければ!

 

更に、隣の大工見習いのお兄さんが

「チャンスだ、チャンスだ!」とやってきます。

隅にある100Lの水がめをわざわざ外に出して

屋根から落ちる雨水を溜めてくれます。

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工房には水道がなく、

お水はいつも買ってくるので

これも大助かり。

 

わー、きゃー、とたくさん騒いだ後

少し気持ちが収まってくると

今度は妙な静けさが訪れます。

 

怒鳴るのに疲れるのか、

凄まじい雨に魅了されてしまうのか。

仕事の手は動かしながらも

意識はどこか、外の雨にあります。

 

私の勝手な意見なのですが、

私が雨やどりが好きな理由って

その時、その場にいるみんなが

「平等」だからかもしれません。

 

お金持ちもそうでない人も、

日本人もケニアの人も

大家さんも大工さんも織子さんも、

自然にあっけなく負けて

ひたすら晴れを待つ時間。

 

みんなが空を見上げていて

ちょっと寒そうにしていて

椅子があれば席を譲り合って

ただただ、待つ時間。

 

急いている日々の中で

無理やり休憩させられているみたいで

ちょっとホッとします。

 

雨が上がると、次の問題が。

工房の表のぬかるみがひどいことに・・・

沈まずに歩くのに一苦労!

 

すると、また新たな救世主が。

「ちょっと待っててね~」と

これまた別の近所のおじさまが

まず木くずを撒いて地面を固め

重い石を丁寧に並べて足場を作ってくれます。

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試しに、「1、2、3、渡れた!」と

石の上を歩いて見せると満面の笑み!

片言のスワヒリ語の私と英語の喋れない彼が

言語を超えた笑顔のハイタッチ。

 

しかも、この木くずと石の景色

ちょっと秋らしくておしゃれじゃないですか?

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工房からの帰り道、

白々しく晴れた空を見上げると遠くに

お約束の虹が掛かります。

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皆さまも、突然の雨に降られたら

ときには雨やどり、してみませんか?

長い物には巻かれろ?織りトレーニングその②

先週お伝えした織りトレーニング。

今週も絶賛開催中です。

 

前回覚えたペダルの結びはまだ序の口。

本題はここから!

「整経」と「巻き取り」です。

 

整経とは必要な経糸(たていと)を測る過程です。

10㎝毎に配置した細長い杭に糸を巻き付けて、

糸の幅と順番を決めていきます。

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今まで使っていた整経台が使いづらかったので

これを機に隣の大工さんに新しいものを

完全手作りで作ってもらいました!

なんと、杭は一本、一本

カンナで削って丸くしています。

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(ソファで上司はお昼寝中でも頑張る大工さん!カンナ仕上げは圧巻でした)

 

実はこの工程、織り準備の中で

最も大事といっても過言ではありません!

 

適切な糸の幅と長さを用意するのはもちろんのこと

引っ張り具合がバラバラで

きつい糸と緩い糸が混ざると

まぁ、織りにくいことこの上ない。

糸の順番も一歩間違えると、後が悲惨です。

 

測り終わった糸は、織り機の後ろに設置し

「巻き取り」作業に入ります。

糸を必要な幅に広げてから、長い長い糸を少しずつ

後ろの棒に巻き込んでいきます。

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更に「綜絖通し」→「筬通し」→「結び」と続き

初めて織り始めることができます。

 

織り体験クラスなどに行くと糸が全て用意してあり

カタン、コトン、と織りだけを楽しめますが、

実は一番大変な作業は全部終わらせてくれている!

ということはどうか覚えておいてください。

 

さて、本題の「長い物には巻かれろ」。

巻き取りの話だからダジャレで付けたわけではなく

今回の私の密かなテーマです。

 

織りスタッフはこの2年の間に、

サイザル織りという新しい技術を習得するために

様々な試行錯誤をしてきました。

 

皆、経験を積んできたサイザル織りのプロですが

あまり好ましくないクセも付いてしまいました。

 

私が日本から何か覚えて新しく教えようとすると

大体、まず最初に否定されます。

彼女たちのプライドもありますが、

サイザルという厄介な素材を使っている以上、

どうしても慎重になってしまうのです。

 

1~2回までは私の顔を立てて試してくれますが

それで納得がいかないと元に戻ります。

彼女たちの気持ちを尊重しつつ、

新しい技の重要性をどう説得するかが

いつも悩みの種です。

 

今回は、まず私の織り修行の模様を

ビデオで見せました。

更に実際に使った麻糸も見せて

(サイザルは麻ではないですが

同じ植物繊維の方が説得力があると思い)

「ほら、これでもできたから大丈夫!」と

話してみました。

 

みんなの目はちょっと懐疑的。

でも懐疑的な瞳の中に「やってみたいかも・・・」

という表情もちらほら見えます。

 

織子のウィンフレッドが咳払いをし、

「一応言っておくけど、サイザルは硬いからね」

(ほら、言うと思った!)

「分かってる。でも、麻も中々厄介な素材だけど

ちゃんと織れたから、みんな私を信じて

お願い、一回やってみて!」

 

いつもじゃなくてもいい。

ただ、時には長い物に巻かれてみましょ♪

と言わんばかりに。

 

結果的には・・・

大成功です。

 

新しい技を試すうちに楽しくなってしまったのか。

4人で力を合わせて整経も巻き取りも、

見事に覚えました。

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(4人で交代しながら新しい技に挑戦!)

 

ね?私を信じて良かったでしょう?

という私の得意気な顔に

みんなはちょっと照れた顔をします。

 

私たちはこれからも、押し問答しながら

サイザル織りを極めていきます!

 

最後になりましたが、織り素人の私に

いつも丁寧に、優しく教えてくださる

箕輪先生、南先生、北村先生。

本当にありがとうございます。

 

皆さまのおかげでまた少し、成長できました。

これからもどうぞよろしくお願いします!

織りトレーニング開始!みんなの「紫色の犬」が生まれた日

工房には時々、織子さんの子供たちが学校の帰りに遊びにやってきます。

 

6歳になる織子のナンシーの娘さんは

毎日学校帰りに来てお母さんの仕事終わりを待ちます。

普段は外で遊びまわっていますが、

雨の日や元気のない日は工房で座っていることがあるので

そんなときのために塗り絵とクレパスを用意しています。

 

先日彼女の塗り絵を見ていて少し面白いことを発見しました。

塗り絵のとき、どの絵も「正しい色」を大人たちに聞くのです。

 

「キリンって何色で塗ればいい?」「ここは茶色、ここは黄色」

「ライオンは?」「オレンジと黄色」

「おうちは?」「赤い屋根に白い壁」

 

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子供の独創性を養うならば、象がピンクだっていいじゃないか・・・

と思う一方、お母さんたちは正解を教えたいという気持ちがあり

また子供もこうして質問することで構ってもらえるのが嬉しいのかもしれない

と考え、何も言わずに観察していました。

 

すると、途中で1ページだけ、女の子が誰にも聞かずに黙々と塗りだしました。

どんな絵だろう、とさりげなく覗いてみると、そこには紫色の犬が。

犬が最も身近な存在だったので、「正しい色」を聞かなくても良かったのか、

急に自我が芽生えたのか。

その紫色の犬だけ、線をはみ出して元気よく塗られていました。

 

この一コマを、織子さん達との関わりで思い出すことになります。

 

話は変わって、今週の木曜日から今回の訪問の一番の目的である織りトレーニングが始まりました。

現在、工房では4人の女性が織りを担当していますが、

彼女たちが近い将来、自分たちのチームを持つリーダーとなるためには

まだまだ学ぶことがたくさんあります。

そして、サイザル織り自体、まだまだ可能性をたくさん秘めています。

 

織り道具の準備や教材の準備に1週間かけて

水曜日までにそれまでの仕事を終わらせてもらい

木曜日の朝、授業が始まりました。

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 (用意した教材。練習問題を含め6ページあります)

 

準備は万端でしたが、水曜の夜はドキドキして眠れませんでした。

変化を嫌う彼女たちが、内容を受け入れてくれるだろうか。

計算問題が多すぎて嫌がらないだろうか。

 

現時点でトレーニングは半分終えたところですが、

結論から言うと大成功です!

 

頭を悩ませる問題もみんなで話し合いながら解決し、

私が教えることすべてに積極的に取り組んでくれて

彼女たちのやる気と本気を改めて見た気がしました。

 

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(トレーニング開始!4人で練習問題を解いてます)

 

トレーニングやその準備についてだけでも何個もブログ記事が書けそうですが(笑)

今日は、その中でも最も感激した瞬間を共有します。

 

先ほどの塗り絵の話に戻りますが、

織子さん達と関わっていると、塗り絵の少女と同じ現象が見られます。

私が決めた色やデザインで好き嫌いは教えてくれるけれど

基本的に自分たちからの提案は絶対にしない。

「どっちの色の組み合わせの方が良いと思う?」と聞いても

「ひかるの方が日本のお客さんの好みを知っているから」と

意見すらもらえない。

 

私の夢見る織り工房は、社員が自らデザインを提案してくるような工房。

とは言っても、まだまだ時間はかかるかな・・・と思っていました。

 

さて、トレーニングの一環で織り機の組み立て方を少し変えて

今まで2本しか使っていなかった足踏み(ペダル)を

4本、つなげてみました。

 

簡単に書くと、2本ではシンプルなチェック柄しか織れなかったのが

4本つなげることで、斜め線やダイヤ柄が織れるようになります。

 

結びを終えた後、糸を数本通して、テスト織りを行います。

この時、当初予定していなかったのですが、

遊び心で4本のペダルを使った斜め線の織りを見せてあげました。

 

斜め線を見たときの織子さん達の表情は、一生忘れられないかもしれません。

新しい発見をしたようにぱーっと明るくなって

「わぁ・・・」とため息のような声が出ます。

 

「やってみたい!」「どのペダルを踏めばいいの?」

と席を奪うように私は織り機から追い出されました。

 

そして、彼女たちに織りを教えてからの2年で初めて

「ひかる、この色で試してみてもいい?」

と聞かれました。

 

10分で終わらせる予定だったテスト織りを

急遽1時間に延ばし、ひたすら織りで遊んでもらいました。

色で遊ぶ人、ペダルの踏み順を変えてみる人。

イデアが止まりません。

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(ナンシーのテスト織りは緑と白の組み合わせ)

 

今まで蓄積してきた経験を基に、

彼女たちの「紫色の犬」が誕生した瞬間。

 

私の夢の形が、ほんの少し実現した瞬間。

 

どうか、この瞬間がこれからもたくさん、たくさんありますように。

「競争」か「共同」か?ケニア農村部の女性たちの場合

今日はアメリカ大統領選挙の日。

世界の政治、経済にも大きく影響するこの選挙の結果を待ちながら

朝から気持ちがソワソワ。

もちろん、そんな私にはおかまいなくケニアの工房は通常運転で動いています。

 

そこで、今日はせっかくなので(?)

ケニア農村部の女性たちの「競争」をテーマにお話ししたいと思います。

 

以前もお話したことですが、農村部の女性たちが何か活動を始める際、

「女性グループ」という団体を作ります。

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(女性グループのミーティング風景)

 

日本の感覚で言うと、サークルに少し似ているかもしれません。

非公式なグループが多いですが、正式にグループとして政府に登録すると

銀行口座を持ったり、ローンを組んだりすることが可能になる制度です。

 

アンバーアワーが誇るサイザル織り糸は全て女性グループによる手作り品。

ナイフで丁寧に抽出したサイザルの葉の繊維を、

手と太ももを使って丁寧に撚りますが、

どちらの作業も重労働。

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(サイザルの葉を割いて繊維を取り出す作業。かなり力のいる作業です!)

 

彼女たちのモチベーションを上げ、仕事を労う意味も込めて

今年の初めまで「プレゼント制度」を設けていました。

 

3ヵ月毎に糸の作り手達の作成キロ数を集計し、

最も糸を作ってくれた女性から順番にランキングを作り

ランキングの順位によって、布、たらい、お皿、スプーン、等

生活用品をプレゼントしていました。

 

ランキング発表の際は「○○さんが今回1位だったから、次は頑張ろう!」と伝え、

お互いに切磋琢磨してもらいたい、というのが当初の願いでした。

 

ところが・・・

制度を導入してからしばらくして気付いたのですが、

そもそもランキング上位者がいつも同じ名前。

しかも、それまで頑張っていた人たちが段々と糸を作らなくなってしまったのです。

 

工房スタッフがミーティングを開き話し合った結果

プレゼント制度は返ってみんなのモチベーションを下げるという結論に至り

制度をやめるか、全員にギフトを上げるかどちらかにした方が良いと

アドバイスをもらいました。

 

話を聞いてみると、納得する情報をいくつか得ることができました。

 

そもそも、織り糸作りは農家の女性たちの副業で、

農業や子育ての合間をぬって作ってもらっています。

 

 

子供がたくさんいる家庭、子供がまだ幼い家庭では糸作りに専念する時間が少ない。

兄弟が多い家族は畑仕事の人手があるから早く終わるが、

事情があって人手の少ない畑では畑仕事だけで手いっぱいの女性も。

そんな中でも時間を割いて、量は少なくても糸を作っているのに

結局、得するのは時間のある人ばかりだ。

どうせ私は頑張ってもプレゼントはもらえないんだから、

だったら頑張らないで辞めてしまおう、という考え。

 

また、やはり手仕事である以上、向き不向きも生じます。

どうやら一部グループでは、上手な人たちは他に追い付かれることを恐れて

下手な人に上手くなるコツを教えるのを渋っていたそうなのです。  

 

更に、作り手の年齢は20代から70代までと幅が広い。

若い世代は「お年寄りは時間がたっぷりあるし、技術もあるからずるい」と言い

上の世代は「若い人たちの方がスタミナがあるから作り続けられる」と言う。

ここでも、意見の相違が・・・  

 

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(この方々は皆60代。仲良く糸を撚っています)

 

これでは本末転倒。

今思えば、こうした問題の可能性は想定できたのかもしれませんが、

制度導入当初には思いつかない状況でした。

 

制度自体にも公平性に問題があることを認め、

スタッフのアドバイス通り、プレゼント制度を廃止しました。

ただし、今度は多く作っている人たちががっかりしないように、

量が多い人が得する価格制度に変更し、

ほとんどのグループはそれで納得してくれました。

 

ところが・・・

一度始めた制度、特にプレゼントが関わる制度を廃止するのはやはり難しい・・

 

「私が毎年もらっていたタライはどこ?」

「頑張ってない人たちの言い訳聞いてたって成長しないわよ。

せっかく良い競争ができてたのに、どうして止めるの?」

と、今までプレゼント制度で潤っていた人たちからのクレームが寄せられます。

 

その反面、プレゼント制度が無くなって協和性が増して、

成績が上がっているグループも・・・

 

日本の教育の現場でも、「競争」と「共同」のどちらが良いのかと議論になりますが

なるほど、本当に正解が出ません。

 

競争で伸びる人もいれば、競争で埋もれてしまう人もいる。

努力していない人もいるけれど、努力するのに限界を感じている人もいる。

全員を満足させることができなても、

より多くの人と協力しあえるにはどんな制度が正しいのか・・・

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(仲が良いグループはこんな素敵な笑顔を見せてくれます!)

 

絶対的な正解がないこの問題には、この仕事を続ける限り悩まされそうです。