ちょっと待って、ちょっと待って、ケントンさん!?
先週末、久しぶりにはじけた私は、気分も新たにブックカバー作りを進めていました。
が、解放された楽しさも束の間、工房では待ってましたとばかりに問題が発生。
あちらこちらから、私を呼ぶ声が、やまびこのように響いていました。
「マリーナ、発電機がまた動かない。」
ここのところ不具合だった発電機が、またもやご機嫌ななめとなり、私は朝から街の電気職人のもとを訪ね2往復。
「マリ~ナ、織ってみたけどどう?」
ブックカバー用の織り生地づくり。サイザルの撚り糸が細すぎて、織り目にたくさんの隙間が。
いやいや、「どう?」じゃなくて、これではダメってこと、散々話し合ってきたじゃん…。はあ…。いったん解いてやり直し。
「マ~リ~ナ~、セロテープを買ってきてくれ。」
「棚に入ってない? 探した?」
「探してない。」
探してから言ってくれ…。
(小さい発電機の故障を、男4人が頭並べて議論中)
問題には事欠かないケニア工房ですが、私たちが扱うサイザル製品でも、ブックカバーはオリジナルということもあり、自信を持って届けたいのが作り手としての気持ちです。
その質を左右する第一ステップが、素材。
柔らかい手触りと、一番きれいに織れるサイズをめざし、村々の女性グループに特注で作ってもらうサイザルの糸。担当スタッフのケントンがグループを訪問し、品質をチェックして購入しています。
ここで便利なのが、ケニアを代表するハイテクツール「エムペサ(M-PESA)」。
携帯電話で送受金ができ、街のいたるところにあるエムペサ代理店に行けば、入金もでき、即現金化もできる。お店ではそれで支払いもできる。言わば非常に便利な「携帯銀行口座」。
この仕組みによって、私たちも農村部のグループに支払いができます。
先週金曜の夕方、回収で動き回っていたケントンが、グループから支払い催促が来ているからすぐに送金してと、私に購入リストを渡して帰宅しました。
次の日、そのリストを片手に電卓をたたいていると、あちらこちらに計算ミスが。どう考えても記載されている数字にならず、これはケントンと確認する必要があり、休日だった彼に、計算確認がとれたらグループに払う旨伝言を入れました。
(ケントン(右)は熱弁ふるってスタッフにポイントを説明。なのに問題が多い…)
すると15分後、ものすごい勢いで工房に入ってきたケントン。
「どういうことなんだ!グループからまだ送金されてないと僕に電話がかかってくるじゃないか! 早く支払ってと伝えたのに!」
私はその勢いに驚きながらも、「計算が合わないから、まずはあなたと確認する必要があると言っているだけで、払わないわけではないのよ」と冷静に話そうとしました。
するとケントン、「人間なんだからミスはするだろう!これから用事があるのにわざわざ休日に呼び出して、今は間違ったまま払って週明けにグループに説明すればいいじゃないか!」と。
ちょっと待って。
それはちょっと待って。
あー、ちょっと待って、ちょっと待って、ケントンさん。
今すぐ払えって何ですの?
支払いしろと言われましても間違えだらけでできまっせーん!
これには私、ショック。
多く払ってしまっては、その分を戻してもらうことはできないでしょう。
少なく払ってしまっては、グループで分配する際、不足していると苦情がくるでしょう。
グループとの信頼関係にかかわる大切なやりとりだけに、私は早く支払うことだけを優先することはどうしてもできず、ケントンの対応の甘さと態度にガックリし、さらに怒鳴られるという、私の人生でもそうそうない経験に、気持ちもほとほと疲れてしまいました。
おまけに後から「これも追加で払って」と連絡が入り、その後その金額が間違っていたことが発覚するも、数日報告なし。「いろいろ考え事があると僕は黙るんだ。グループには話してあるから大丈夫。」
大丈夫のポイントが違う…。
ああ、こんな毎日に、ちゃぶ台がいくらあっても足りません…。
ケニア工房の相方、横山くんも帰国のときを迎え、あたしゃこれから一人で工房を運営することができるのだろうか…。
(生産担当:マリナ)