ケニア流、余の辞書に〇〇〇という文字はない…の!?





最近、めっきり工房の話をしていませんでした。あいつ、サボってるなと思われたかもしれません。

 

その通り。

 

4月頃でした。

慌ただしくいろいろなことが起き、やや圧倒される中、工房と心理的に少し距離を置きたくなりました。近くにいくほど見ちゃいけない失敗を見たり、思うようにことが運ばずプレッシャーを感じたりして、抱えきれなくなりそうなのが怖かったのです。

 

このまま無防備に突き進んだら泣くだけだ。

そう思い、いったんブレーキをかける必要がありました。

 

私のケニアでの役どころは、日本の販売状況に支障が出ないよう質を上げて、必要量をきちんと作るよう工房のスタッフと協働していくこと。つまり、日本からの要望と工房からの不満を同時に突き付けられる、魔の中間管理職ポジション。

 

そういえば日本でも常にこんな役回りだったわ…と、我が宿命に天を仰ぎながら、織りとおしゃべりをマルチタスクでこなすスタッフや、DVDだったら4倍速にしたいくらいスローなスタッフを見ては、ため息をつく毎日。

 

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何度も伝えているのに習慣化されないのは、もはや私へのいじめかい?

 

そんな思いを抱え、サボりついでに、彼らの行動をしばし観察していると、ふんふん、ちょっとずつ分かってきました。

 

『辞書』が違う。

 

余の辞書に「不可能」という文字はない、のがナポレオンなら、ケニアスタッフの辞書に「効率性」という文字はどうやらないようなのです。

私が伝えたことが、彼らの行動に変換されるとき、ビックリするほど想定外。

 

そんなケニアスタッフオリジナル辞書、ベスト5。

 

1.早退するときは、事前に伝えましょう。

 

私:上司と相談し、承認を得ておく。

スタッフ:早退する時間になって、「今日は帰る」と言う。

 

なるほど、「事前」の尺度が随分違うのね…。

 

2.半休をとるときは、承認を得ましょう。

 

私:仕事に支障がないか確認し、いつ休みたいか希望を伝え、了承を得る。

スタッフ:当日の朝に「ちょっと遅れる」と連絡が入り、半日来ない。

 

ちょっとじゃないと思うんですけど…。理由を言わないのが定番。

 

3.今日中に終わらせるように進める。

 

私:終業時間が過ぎても、きりのいいところまでやる。

スタッフ:きりがいいのは5時。

 

出勤時間より退勤時間を守るタイプ。

 

4.2時に訪問しましょう。

 

私:2時にその場所にいる。

スタッフ:2時に工房を出る。

 

待つことへの忍耐力があるため、待たせるのも平気なよう。

 

5.今週の仕事をレポートにしましょう。

 

私:書いて提出する。

スタッフ:①書かない ②書いたものをかばんにしまったままにする。③または書いたときだけドヤ顔で提出する。

 

もはやレポートの意味がない…ね。

 

どうにかしたいと焦る気持ちが空回りし、私が思うように動いてくれたら…と何度思ったことか分かりません。ワンマン、スポ根のように厳しく仕事ができる人なら、もっと早く工房を確立することができるでしょう。

 

でも、そんなスタイルで仕事をすることに苦しさを感じる私としては、仕事がスムースに進むことを願いながらも、自分の価値観に寄せれば楽になると、スタッフをコントロールしようとしていると気づき、そんな傲慢な自分がイヤになっていました。

何よりも、それがストレスの原因でした。

 

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同じ社会規範や生活環境で育っていない者同士が協働するためには、「心地よい諦め」が必要。

 

使っている辞書が違うのならば、編集をかけていけばいい。

そしてお互い新しい定義が増えれば、新鮮な解釈ができる。今までになかった価値観に触れることで、精神的な居住圏が広がり、自分の行動も見直すこともできる。それなら人生豊かになるではないか!

 

でも、ひとつお願い。

 

連絡をしないという習慣は見直してもらえないかな…。

ひとこと伝えてくれればそれで済むんだけどな…。

時間守ってくれないかな…。

 

あ、ひとつじゃなかった…。

 

以来、余の辞書からも「効率性」という言葉は徐々に意味合いが変わりつつあり、効率的に動かなくても機能するこの土地のあり方を楽しもうと、新たな人生の意味を追加しようとしているところです。

 

(生産担当:マリナ)