謎の染料「ちゅーび」を求めて。~草木染め試行錯誤の綴り~
素敵な製品を作るため、新しい色の染料を探すことも私たちの仕事です。
しかしここケニアでは、染料に辿り着くまでの道のりは果てしなく長いのです。。。
今回はつい先日起きたエピソードをご紹介します。
先月、とある女性がたまたま染めた物の中に綺麗な赤茶色がありました。
これは初めて見る色でした。
何で染めたのか詳しく聞いてみると、
「ちゅーびの根っこで染めた」と言いました。
ちゅーび?
Chubi?
Kyuvi?
これまで地域でよく使われる木や草は調べていましたが、その名前は初めて聞きました。
きっと部族語で「ちゅーび」と呼ばれる木がどこかにあるのだろう。
それは早速入手しなければ!
というわけで、その日から謎の染料「ちゅーび」探しが始まりました。
(左から2つ目が「ちゅーび」)
まずは、いつも素材を作ってもらっている仲のよい女性グループのメンバーへの聞き込みをしました。
しかし、何人当たっても、「ちゅーび」を知っている人は見つかりませんでした。
どうやら、この木とおぼしきモノは一部の地域でしか知られていないらしいです。
でも、ここであきらめる訳にはいきません。
何人かに根気強く当たった所、やっと「それなら家の近くに生えているよ」という女性に巡り合いました。
じゃあ早速取りに行こう、とその女性が案内してくれました。
「これがちゅーびだよ」と彼女が指さした先にあったのは、
僕が想像していた立派な木ではなく、
その辺の畑に生えていそうな雑草。
あまりの展開に衝撃を受けていると、女性がその雑草を引っこ抜きました。
土の中からでてきたのは、人参のような野菜。
「ちゅーび」の正体は、この高麗人参のような根菜でした。
この根菜は薬としても使われるようです。
確かに女性達に「ちゅーびって木を使うの?」と尋ねた時も「根っこで染めるんだよ」としか言われた記憶がありません。
これまで草木染めは木ばかりを使っていたので、てっきり木の根っことばかり思っていました。
ただでさえコミュニケーションが難しいケニア。
僕は思い込みの罠にはまっていたようです。
長い探索の末、やっと見つけた「ちゅーび」。
きっと貴重なモノなのだろうと思いつつ、丁重にいくつか欲しいとお願いしてみました。
すると親切にも大量に掘り出してくれので、たくさん手に入りました。
さて、なんとかサンプルが確保できたので、次は工房で色を安定的に出す為に実験が待っています。
みなさんのところにこの「ちゅーび」で染めた製品をお届けするのは、もう暫くお待ちくださいね。
横山